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哺乳類の進化とウィルスとの関係

投稿日時:2020/09/04

こんにちは。培養室です。

9月になり、どこか秋の気配を感じる季節になりました。

2020年はコロナ渦の中、皆様やりたいことも我慢して

日々をお過ごしの方もいらっしゃるかと思います。

 

今年はウィルスのことばかりで頭が痛くなりそうですが、

またここでウィルスについての論文を紹介させて頂きます。

 

題名は、Retroviral Endogenization and its Role in the Genital Tract during Mammalian Evolution

(哺乳類の生殖器におけるレトロウィルスの内在化と進化的役割)

 

ウィルスといえば、外からやってきて感染して悪さしかしない、と思われますが

実は外から生物の体に侵入したウィルスの遺伝子が、私たちの身体の中に取り込まれて

現在の生命活動に必要不可欠な役割を担っていることが分かってきています。

 

この論文では、哺乳類の長い進化の過程の、子宮や胎盤形成に関わるウィルスと

遺伝の関係について述べたものです。

 

ウィルスが感染する宿主の脊椎動物のゲノムにウィルス自身のDNAを挿入し寄生すると、

それが生殖細胞に感染した場合は、次世代の子の世代へとウィルスの持つ遺伝子

が受け継がれていくことが考えられています。

 

長い年月をかけて、感染したウィルスの遺伝子が宿主に侵入し、やがてその機能

が宿主の生命の進化に関わっているという、とても興味深い内容の論文です。

 

不妊治療やヒトの生殖に大きく関わる事にも、このウィルスとの関係があります。

 

その一つが、卵子と精子の受精です。

 

卵子に体外から侵入してきた異物ともいえる精子が、なぜ排除されずに卵子に侵

入し受精が起こるのか。

 

この論文の中では、ウィルス由来の遺伝子が、哺乳類の卵子と精子の受精する過

程においても関与していると考察されています。

 

ヒトの遺伝子の中にもウィルス由来のものがゲノム全体の8%ほど含まれているそ

うです。

 

私たち生物は、ウィルスとの戦いと共存を繰り返しながらも、したたかに良いと

ころを取り入れて進化してきたようです。

 

新型コロナウィルスとの関係も、長い目で見ていくしかなさそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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