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論文のご紹介

投稿日時:2020/08/29

こんにちは、培養室です。

さて今回ご紹介する論文は「A battery boost for old eggs?」です。
こちらの論文ではコエンザイムQ10(CoQ10)を培養液中に添加し、患者から採取した未熟な卵子(GV)を体外培養(IVM)を行い、培養後の未熟卵の成熟率や異数性(染色体の異常)の割合がどうなるかについて調べています。

一般的に女性の年齢が上昇すると、卵子も老化するということが知られています。そのメカニズムの1つにエネルギー産生を行っているミトコンドリアの機能低下が挙げられます。ミトコンドリア機能が低下すると、エネルギー産生が低下、胚の異数性(染色体の異常)が上昇し、胚は発育不良になると言われています。

CoQ10は抗酸化作用を持ち、食事から摂った糖質や脂質を細胞内のミトコンドリアで燃焼させてエネルギーに変えるのを助ける作用があります。

38歳以上の45名の女性と30歳以下の18名から未成熟卵(GV)を採取し、コエンザイムQ10を添加した培養液で成熟培養を行った群(CoQ10群)と添加していない培養液で成熟培養を行った群(対照群)に分けて熟卵の成熟率や異数性率について調べたところ、

結果は38歳以上の患者のMII成熟率は、CoQ10群では82.6%、対照群では63%でした。また、高齢患者の対照群の卵子の異数性率は65.5%でしたが、CoQ10群では異数性率が36.8%に低下しました。 30歳以下の女性では、CoQ10添加による成熟率の上昇はなく(80.0%対76.9%)、また卵子の異数性率はCoQ10も変わりませんでした(それぞれ28.6%対30.0%)。このことからCoQ10を培養液中に添加することで、高齢女性の卵子の受精率や胚の発生率を改善する可能性が示唆されました。

CoQ10のサプリメントは当院の男性不妊外来でも処方されることが多いサプリメントです。
もし処方を希望でしたら、医師にご相談ください!

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