子宮内精子注入法
はじめに
子宮内精子注入法(人工授精・IUI)とは、専用のカテーテルを用いて、精子を子宮内に注入し、卵子と出会うための移動距離を短かくすることで、受精の可能性を高める方法です。子宮内に注入された精子は、排卵後卵管内に取り込まれた卵の元へ自ら移動して自然に受精しますので、妊娠としては自然妊娠とほぼ同じになります。
適応
- 1:フーナーテスト(性交後試験)を数回施行した結果があまり良くない。
- 2: 排卵日前後の頸管粘液の状態があまり良くない。
- 3: 精液検査の結果があまり良くない。
(精子の数が少ない・運動率が悪い etc)
- 4: 夫婦生活がなかなかもてない。
- 5: タイミング指導でなかなか妊娠できない。
IUIの種類
排卵後、卵管内に取り込まれた卵の生存期間は8~10時間と短いため、タイミングを合わせて精子を注入します。
当院のIUIには3つの方法があり、卵胞の育ち方や適応によって使い分けます。
1:スタンダードな方法
超音波・尿検査・ホルモン採血などから排卵日を予測し、タイミングを合わせてIUIを実施します。
2:点鼻薬(ブセレリン)を用いる方法 ※保険適応外
排卵予定日の2日前に点鼻薬を使用し、35時間後に排卵させるよう促すことで、より正確なタイミングをつくる方法です。
(ブセリン1本¥3,850(税込) 3周期分使用可能)
3:注射(hCG)を用いる方法
hCGの注射は点鼻薬よりも早く排卵を促すことが出来る為、排卵日前まで卵胞が育った場合に使用し、翌日IUIを実施します。
使用するカテーテルの種類
1:スタンダ-ドなカテーテルを用いる方法
IUI専用のカテ-テルにて精子を子宮内に注入します。
2:バルーンカテーテルを用いる方法
通常のカテーテルで何回もトライしている方、卵管の入り口が狭い方や卵管の通りが悪い方に有用です。子宮の入り口をバルーンで膨らませることで、 子宮の入り口を完全に封鎖します。子宮内を精子で充満させることで、精子の逆流を防ぎながら、卵管に精子を送り込む方法です。
IUIのプロセス
1: 超音波・ホルモン検査などから排卵日を推定
卵胞の大きさを超音波やホルモン検査(尿検査・採血)で確認し、排卵日を予測します。
2: ご主人様はIUI実施日に採精
精液所見にもよりますが、禁欲期間5日以内での採取を推奨しています。(禁欲期間が6日間を超えると妊娠率が低下するという報告があります。)
当日採取された精液は、奥様かご主人様に採取後3時間以内に持参していただきます。また、院内の専用のお部屋でも採精可能です。
3:採取した精液は濃度・運動率・奇形率を測定
元気で活発な精子を多く集めるため洗浄濃縮し、約1ccに調整します。調整には約1時間程かかります。
4:IUI実施
超音波で卵胞をチェックした後、洗浄濃縮した精子を専用のカテーテルで子宮の形に合わせて、子宮内の奥まで静かに注入します。 ほとんど痛みは無く、約1~2分で終了します。
排卵前の場合は、黄体ホルモンの賦活化と排卵を促す目的で、hCGを 5000単位注射する場合があります。
排卵後の場合は、黄体ホルモン補充のため、プロゲステロンの注射を行う場合があります。
5:IUI後
実施後は、そのまま内診台で5分程休んで頂きます。
感染予防のため抗生剤を実施後2日間服用して頂きます。
妊娠率
IUIにおける妊娠率は、年齢や精液の所見等で異なりますが、約5~10%です。
また、1~3回目で妊娠される方が多く、実施回数を重ねるにつれ妊娠率は下がります。回数を重ねても妊娠の可能性は低いと言われています。
人工授精は精子を注入する過程が「人工的」なだけで、精子を注入した後の受精、着床、妊娠とういう過程は「自然」であり、性交渉による妊娠と変わりはありません。タイミング指導よりも妊娠の可能性は高まりますが、受精や着床に関しては改善されないため、妊娠率としてはあまり高いものではありません。
回数の目安
これらのことから、当院では、年齢や治療結果などを考慮して3~6回で体外受精へのステップアップをお勧めしています。ただし、あくまで目安であり、最終的には患者様のご希望を伺い治療方針を決定しますので、お気軽に医師にご相談下さい。
price
- 1回 自費:¥25,300(税込) 保険:¥5,460
- ※人工授精実施の前に、ご夫婦共に感染症検査を受けていただく必要があります。
結果が出るまでに4~5日ほどかかります。当日に結果が出ていないと実施できませんのでご了承ください。1年以内に他の検診等で検査されている方はコピーをお持ちいただいても結構です。他の医療機関で検査を受けていただき結果をお持ちいただいても構いません。
※人工授精の当日はお子様連れでの来院はできません。